テレビでは、ブラジルを希望の大国にしたと言われるルーラ前大統領が誇らしげに宣言する。「私たちは低迷期を脱しました」経済成長に伴い、失業率も減った、と。2014年のサッカーW杯、2016年のオリンピック開催地として、めまぐるしく変化するブラジル。その経済発展の中心、サンパウロ(聖市)の周縁で生きる80年代生まれの男女3人。年金暮らしの祖母の家に住み、客が来ないタトゥショップを開いているルカ(31歳)、あと2週間で解雇されるルイス(29歳)、旅することを夢みながら、熱帯魚店で働くルイスの恋人、ルアラ(30歳)。

週末になると、3人はルカの家で、ビールを飲みながら、ただ、目の前を通り過ぎて行く時間を共にする。嫌な上司でも文句が言えないと嘆くルイス、ポラロイド写真を撮るルアラ、祖父の銃を2人に見せるルカ…。祖母と共に、4人で海に行けば、車が故障して高い修理代を分割で払う羽目になり(ルカ)、上司を脅して分け前をとったと思えば、逆に脅され(ルイス)、夢を見られるか、と男の誘いに乗れば当てがはずれ(ルアラ)、と何をしてもうまくいかない3人。

そんな中、ルカの祖母が入院し、ルイスは暴行され、サンパウロは嵐に見舞われる。
どこにも行き場がなく、「死ぬよりも生きる方が怖い」と感じる日常、嵐になれば脆弱なインフラが、どこまでも崩れて行く大都市。外から見える華やかな発展とは裏腹な現実。それでも3人は生きて行く。どこへ向かうか分からなくても、たとえ、亀のようにのろい歩みであっても…。